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第17話  

(小さなマッチ棒が、配信者秋元ちゃんにスーパードリームロケットを66個贈りました)

 「小さなマッチ棒さん、スーパードリームロケット、ありがとうございます!ちゅっ!マッチ棒さんは、歌を聴きたいですか?それとも、ダンスが見たいですか?」秋元詩韻は言った。なんとかこの大物ユーザーを引き留めたいのだ。

 「マジかよ!マッチ棒兄貴が来た!」

 「マッチ棒兄貴、すげえ!どのルームに入っても、必ずスーパードリームロケット66個コースだな」

 「マッチ棒兄貴、崇拝してる!ずっと追いかけて、やっと会えました!」

 「マッチ棒社長、カバン持ちはいりませんか?」

 画面はコメントで埋め尽くされた。

 その時、ライブ配信ルームに、森岡翔よりもレベルの高い大物ユーザーが入室してきた。なんとレベル298だ。一気に森岡翔はランキング2位に落とされてしまった。

 この俊ちゃんという大物は、入室するなりコメントを投稿した。レベルが高いので、コメントの文字が金色に輝き、他の視聴者の目を引いた。

 「詩韻、今夜、俺がランキング1位になったら、本当にデートしてくれるのか?」

 「ええ!俊朗、今夜、あなたがランキング1位になったら、明日はデートしましょう」

 秋元詩韻は、柔らかく魅力的な声で答えた。

 それを見ていた視聴者たちは、大騒ぎになった。

 「マジかよ、誰だコイツ?女神が奪われるぞ!」

 「うちの大学のイケメン金持ち、高坂俊朗だよ!超お金持ちなんだぜ!」

 「高坂俊朗、今夜こそ、秋元詩韻を落とす気だな」

 「明日、大ニュースになるぞ!タイトルはこうだ。『イケメン金持ち高坂俊朗、数千万円貢いで学園のマドンナ秋元詩韻をゲット!』」

 「いいね!絶対に学園ニュースでトップ記事になるね!」

 森岡翔は、ルームから退出するところだった。

 しかし、よく見ると…

 高坂俊朗は、相川沙織がいるにもかかわらず、秋元詩韻に言い寄っている。しかも、ランキング1位になってデートしようとしている?

 させるもんか…

 くそ…

 なんとしても、コイツの邪魔をしてやる。今夜、少しだけ利子を回収して、後でゆっくり元本も回収してやる。

 高坂俊朗もまた、今夜はなんとしてでも秋元詩韻を落とそうと決意していた。彼女を口説き始めてから、かなり時間が経っていた。金も使ったが、まだ成功していなかった。かといって、はっきり断られたわけでもなく、その中途半端な態度に、彼はいつもヤキモキさせられていた。秋元詩韻は、男の闘争本能を掻き立てる女なのだった。

 彼の両親は自営業をしており、江城ではそれなりに有名な存在だった。資産は10億円を超えており、高坂俊朗は普段から金遣いが荒かった。大学でも、金持ちのイケメンとして有名だった。

 大学に入って3年間、彼が気に入った女は、金にものを言わせて口説き落とせない女はいなかった。それだけでなく、彼は何人もの女性配信者をモノにしてきた。しかし、秋元詩韻だけは、なぜか落とせなかった。

 数ヶ月間、数百万円も貢いだが、手すら握らせてもらえなかった。もちろん、他のライバルたちも同様だった。

 しかし、それは高坂俊朗の征服欲をさらに掻き立てていた。今日こそ、いくら金がかかろうとも、秋元詩韻を落とす。自分の欲望を満たすためだけでなく、他のライバルたちに恥をかかせるためにも。

 相川沙織?

 ああ、あれもやったし、もう飽きたな。もし沙織が文句を言わなければ、もうしばらく遊んでやってもいいくらいの存在だった。

 秋元詩韻のライバルになろうだなんて…

 とっとと消えろ…

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